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食品販促マーケティング担当者必見!牛乳のサジェストワード推移から“52週マーケティング”で読み解く、食卓のリアルな事情

 

【食卓のリアルな事情&販促ヒント集】

検索エンジンでキーワードを入力して検索するとき、主なキーワードと一緒に入力されるワードをサジェストワード(以下サジェスト)と呼びます。上の表は、食卓でおなじみの牛乳と一緒に多く検索されているワードをいくつかピックアップし、2021年の月ごとの増減推移をグラフにしたものです。グラフの左から順に1月、2月…として表示しています。

この記事では、サジェストの月ごと傾向データを基にして、生活者の食卓でのリアルな事情から考える、有効なマーケティング情報など打ち手のヒントをお届けします。

 

「牛乳×生チョコ」が2月に検索されるのは、やはりバレンタインデーの影響か

例えば「牛乳×生チョコ」キーワードをみてみましょう。1月から2月にかけて爆発的に検索ボリュームが多くなります。この時期での増加で真っ先に浮かぶ行事がバレンタインデーです。牛乳と生チョコを使った手作りチョコへの関心が高まっているであろうことが容易に想像できます。「牛乳×生クリーム 作り方」というワードもバレンタインデーに影響を受けそうなワードと考えましたが、「牛乳×生チョコ」ほど大きな幅ではなかったものの、2月に検索ボリュームの増加が見られました。

このような季節やイベントに応じた分かりやすい傾向もあれば、少しイレギュラーに思えるものもあります。本稿では1つをピックアップして、なぜそうなったかを深掘りしたいと思います。

 

「牛乳×賞味期限」が1-3月に増えている?夏場ではないのに?

同様に「牛乳×賞味期限」で調べてみると、検索ボリュームが2021年1-3月にアップしていたことが判ります。筆者は、牛乳の賞味期限が気になるのは夏場ではないのか?と疑問を抱き、この頃を振り返ってみました。コロナの影響で小学校の休校などが相次ぎ、給食を行えなかった自治体が多くあった当時、それらの影響から牛乳の販売が不振に陥り、廃棄ロスの問題がニュースなどで多く取り上げられました。牛乳廃棄を回避するために、購買を促進するような動きがあったことも記憶に残っています。

これら牛乳の販売不振の背景などがある一方、JAcom農業協同組合新聞2021年2月10日記事には、「コロナ禍で「牛乳・乳製品」の飲食機会が増加 牛乳を使ったレシピ公開中 明治」とありました。
また農林水産省が主導した、2021年末年始の牛乳消費拡大に向けて「NEW(乳)プラスワンプロジェクト」も発足しました。
この中で記載されている、「2.牛乳・乳製品を使ったレシピの紹介」を見ますと、多くの企業やサービスが、牛乳消費を促進するレシピ発表などで消費拡大を応援していたことが判ります。各社の取り組みはもちろん苦心する牛乳業界を応援する意図が一番でしょうが、時節に応じて自社商品の販促を上手く絡めている事例と言えるかも知れません。

筆者も微力ながら、普段の生活で牛乳の消費を少しだけ増やすよう心掛け、少しでも手助けになればといつもよりも多めに購入したことを思い出します。

 

では、牛乳の賞味期限を検索した生活者の行動は何を現わしているのでしょうか。
ハウス食品グループ本社株式会社が2021年3月30日に配信した「食品ロスに関する最新アンケート調査」(注意:直接PDFファイルにリンクしています)を見ますと、【期限が近づいて焦ったことがある食品・食材ランキング】(2021年1月)の1位に牛乳が上がっており、アンケート回答者の17.9%が牛乳の期限切れに焦っていたことが現れています。前述の牛乳廃棄ロスの問題を案じて牛乳を普段より多めに買ったが消費に困った人たちが、「牛乳×賞味期限」で検索をかけたであろうことが推測できます。

同社では、2021年5月19日にも、「コロナ禍における在宅時間を、手作りスイーツでもっと快適に。フルーチェがもたらす リラックス効果が明らかに」(注意:直接PDFファイルにリンクしています)というリリースを出しており、自社のフルーチェと絡めてコロナ禍での牛乳消費を促す情報発信を続けていました。

くわえて2022年の動向ですが、NHKニュースの2021年12月23日記事「生乳 かつてない規模で余るおそれ 企業に牛乳消費後押しの動き」にありますように、今年も同様の牛乳消費を後押しする情報が多く発信されていることが判ります。引き続くコロナ禍において、「牛乳×賞味期限」を検索する生活者の関心は今後も続くことが予測されます。

一方シンクタンクのニッセイ基礎研究所は「コロナ禍における家計消費の変化~ウィズコロナの現状分析とポストコロナの考察」において「食関連で支出額の増加が目立つのは、パスタや即席麺、冷凍食品など手軽に食べられる利便性の高い食品に加えて、生鮮肉やチーズなどの比較的高級な食材、油脂・調味料、チューハイ・カクテルなどの酒類」と、レポートしています。

コロナ禍が続くいま、牛乳の賞味期限を心配する生活者の関心度が保たれる一方、このようにむしろ購買促進されやすい商品もあります。

 

新しい販促アプローチのヒントに

これらをふまえて考えてみると、例えば「自社商品×牛乳」のケースや購買が進む見込みのある商品情報を参考に、レシピやセット販売などであらかじめ生活者ニーズを先取り、そこから予測・仮説立てすることで新しい販売促進のヒントを獲得できるかもしれませんね。

食卓の定番食品である「牛乳」。一見すると年間通じて購買行動に大きな波が起こりにくい気もしますが、このようにその時々の社会的背景から掘り下げてみると、まだ見ぬニーズ・関心の発生など隠れた変化が存在しそうです。
こういった食卓のリアルな事情をていねいに紐解き、新しいビジネスチャンスにつなげてみてはいかがでしょうか。