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News Update

意外と生活者は知らない?年間検索数の推移を分類ごとに読み解いたら、商品特性にまつわる“隠れニーズ”が見えてきた

【食卓のリアルな事情&販促ヒント集】

前回の牛乳テーマと同様に検索数推移とその検索タイミングから生活者の関心やニーズを読み解いてみました。今回は食卓でもおなじみの「はちみつ」というキーワードを例に、サジェストワードの検索数の推移からどんなことが読み解けるかご紹介いたします。

 

「はちみつ」を例に生活者の興味・関心を読み解き

「はちみつ」につづく様々なサジェストキーワードをセグメント※に分けたうえで、直近一年間の検索数を集計し年間の検索数の平均からの差異をまとめたものが上記の表です。サジェストワードをセグメント分けし年間の合計検索数の多い順に並べました。これを見ると、「食材」関連のセグメントに含まれるサジェストワードの検索回数が最も多く、その次に「ダイエットや健康」、含まれる栄養素など、そして「容器/保存方法」(保存の方法と保存するための容器という関係性で今回グルーピング)関連のテーマに属するサジェストワードが多く検索されていることが分かります。

※特定の条件・共通項をもとにグルーピングしたもの。例えば“ゆず”や“りんご”などのキーワードは「食材」関連セグメント、“~レシピ”“~の作り方”などは「レシピ」関連セグメントといった形で振り分けました。

またセグメントごとの検索数で比較したところ、地名や産地・企業名やブランド名などのセグメントは下位に位置し、「はちみつ」キーワードでは産地やブランドにこだわる検索ユーザーは少ないことが見てとれます。

一方、上位のセグメントを見てみると、「食材」や「健康」関連のセグメントに続き、「容器の形や保存方法」関連が入っていることに気づきました。「はちみつ」以外の他の食品でも、容器や保存方法に関連したキーワードがセットで検索されることはよくあると思いますが、セグメント毎で集計した際に上位に上がることは個人的には珍しく思い、ここに検索ニーズに対する打ち手のヒントがあるのでは?と仮定しながら深堀を進めてみました。

一見季節に関係のない「容器/保存方法」関連のトピックに季節性がある

上位3つのセグメントをもう少し見てみましょう。ここでの傾向を紐解くと、「食材関連」のセグメントでは11月~1月付近の検索数がのびており(ちなみに「はちみつ」単体でのキーワード検索数は8月から徐々に増加し11月まで年間の平均を上回り検索されている)、寒い時期に一緒に食べ合わせる食材への関心が高まっていると言えそうです。また、はちみつを採取する時期が10月~11月に集中するケースが多く、これも検索数の推移に影響する要因と推測できます。

その一方で、一見季節に影響を受けないと思われる、「容器/保存方法」に関しては、1月から5月の間で年間平均月間検索数を大幅に上回っています。季節でいうと、冬から初夏にかけて「はちみつ」×「容器/保存方法」関連のサジェストワードとともに検索するユーザーが多くなっています。急激な増加ではないことから、特定の行事等、一過性のものによる影響は少ないと思われます。そこでもう少しこの「容器/保存方法」セグメントの中に含まれる、具体的なサジェストワードを見ていきましょう。

「容器/保存方法」関連のサジェストワードの中で1月から6月にかけて年間の平均月間検索数を上回っているサジェストワードをピックアップしてみると、下記の4つがあがってきました。

・「固まる」

・「結晶化」

・「湯煎」

・「溶かす」

 

試しに「はちみつ 固まる」で検索してみたところ、検索結果上位(2022/03/07現在)の3つの記事タイトルは下記の通りになりました。

「固まったはちみつは食べられる?固まる理由と戻し方を解説。おすすめレシピ3選も!」

「食べられる?はちみつが白く固まる原因と簡単な戻し方・保存方法を紹介!

「はちみつが固まる…その理由と溶かし方!」

検索順位4位以下も、はちみつの結晶化とその戻し方についての記事コンテンツがつづきます。Googleのコンテンツ評価基準のひとつとして「検索ユーザーの検索意図に合致するか否か」の判定があると言われているため、検索意図にマッチした記事が検索結果上位にあがりやすいとされています。

つまり「はちみつ結晶化に対する戻し方」に関する記事が上位にあがっているということは、それだけこのテーマに関心のある検索ユーザーが多い可能性が高いと言えそうです。

また「容器/保存方法」セグメントを掘り下げその内訳をみてみると、「スティック」や「小分け」というサジェストワードが含まれていることが分かりました。

このことをふくめこれまでの調査から、はちみつにまつわる検索傾向・意図として、以下のような生活者の検索フローが仮説建てできるのではないでしょうか?

 

◆購入前の検索シーン例

・はちみつの健康面での効果を調べる(健康面でのメリットをふまえ購入検討したい)

・はちみつに合う食材や料理を調べる(購入前にはちみつの応用方法を知りたい)

・はちみつの購入チャネルを調べる(実際に購入する場所を探したい) など

◆購入後の検索シーン例

・はちみつを使った料理の作り方を調べる(はちみつを上手に活用したい)

・はちみつが固まりどのようにして溶かすか調べる(はちみつを使いきりたい)など

 

ポイントとなるのは、上記フローの中で検索ユーザーが「検索したタイミング」です。例えば、はちみつに対する「食材」や「健康」関連などのセグメントでは、比較的「商品購入前」に検索されやすい傾向が読み解ける一方、「容器/保存方法」セグメントでは、はちみつを使用した後、すでにキッチンにあるはちみつどうしたいかという検索意図が隠れているセグメントであり、そこから生活者の「上手にはちみつが使いきれない!」という困りごとがあると推測できます。

 

ここからの読み解き

・はちみつは気温が低くなると固まりやすい特性を持っている

・この特性に対する生活者の認知は高い=比較的当たり前と思われる

・一方で一定の検索ユーザーは上記検索傾向からその解決法を求めている(=「購入したはちみつをおいしく上手に使い切りたい」というニーズが一定存在する可能性あり)

このはちみつの特性をふまえてか、スーパーでは容量の小さいパッケージで販売されている商品をよくみかけます。例えばはちみつをキャンプに持って行く時に必要な少量だけ使う、あらかじめ使う分量がわかっており必要な分だけ購入したい、というニーズに企業側が対応していることがわかります。

その一方で、先ほどのリサーチからみても、寒い時期にこれだけ検索されていることから、「大きなサイズで購入したはちみつをおいしく上手に使い切りたい」というニーズは依然あるのではないかと推測できます。

サジェストワード「小分け」に対応するかのように、小さなサイズなど多彩な商品ラインナップをもつはちみつですが、それ以外にも、あえてこのはちみつの特性に着目し、ここでの生活者のお困りごとをお手伝いしてみる事が効果的かもしれません。

このように生活者の商品利用シーンにくわえ、検索シーンのタイミングまで読み解くことで新しいニーズの掘り起こしなどにつなげられるのではないでしょうか。今後もこのような新しい商機づくりのための、年間の検索傾向の読み解き方など、ヒントになる手法をご紹介できればと思います。