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シンガポール進出成功事例分析!1年半で4店舗展開。日系菓子店に学ぶ、成功のヒントとは?

こんにちは。世界のママを研究しつくす!「グローバルママ研究所」のNanaです。
仕事、家事、育児・・・毎日忙しいママたちの疲れを癒すちょっとしたご褒美といえばスイーツ!かくいう私もスイーツが大好きで疲れたときは、家族に内緒でこっそり楽しんでいます。
今回のテーマは、日本企業の進出先として挙がりやすいシンガポールでめざましい発展を遂げている日系菓子店を取り上げます。シンガポールといえば、流行り廃りのスピードも速い国。マーケットについていくには迅速な決断が必要です。当地で1年半という短期間で4店舗も展開をし、成功を収めているポイントとは?ぜひ、そのヒントをつかんでみてください。

濃厚なココナッツミルクジャムをはさんだカヤトースト、甘い蜜がかかったアイスカチャンと呼ばれるかき氷、練乳たっぷりのコーヒー。シンガポールには伝統的なデザートメニューが豊富に存在し、甘いもの好きな国民性をあらわしている。赤道直下で常夏な熱帯気候のもと、体に染み渡る甘いものを好む国民性が育まれたのではないだろうか。そんなシンガポールに2015年に進出した日系菓子メーカーが、現地の人々の人気を得て、続々と出店数を伸ばしている。今回はおよそ1年半の間にシンガポール内に4店舗をオープンした「シャトレーゼ」をテーマにその成功の極意に迫る!

カギは、庶民が普段使いできる価格設定にあり!

シンガポール家庭の世帯月収の中央値は8,846シンガポールドル(日本円でおよそ70万7680円)と、日本の世帯月収を超えている。そのため、物価も高く、日本の2~3倍の値段もする和食レストランや日本製のものは高価だというイメージが強い。しかし、そのようななか、1杯20ドル以上(日本円で約1,600円以上)するラーメン屋の行列に並ぶ若いカップルや、カローラクラスで一台約1,000万円する日本車が街中にあふれている。「Made in Japan」はシンガポールでも立派なブランドなのだ。
そんなシンガポールでのシャトレーゼのウリは「日本直輸入」そして「お手頃価格」日本でも手の届きやすい価格設定のシャトレーゼ。その値段はほぼそのまま、シンガポールに持ち込むことで「気軽に買える日本製スイーツ」という新しい選択肢を提供した。「日本のお菓子は高級」というイメージを払拭することで、地元民の支持を獲得したのである。フワフワのスポンジ、口当たりのよい滑らかな生クリームが特徴の日本スイーツを売りにする日系洋菓子店はシンガポールにいくつかあるが、そのどれもが高級志向。他の日系パティスリーとシャトレーゼの値段を比較すると、他のパティスリーではショートケーキ1つが約7~10ドル前後(日本円でおよそ560円~800円)で販売されているのに対し、シャトレーゼではショートケーキ1つ3ドル台から。個包装の菓子なら、人気の「ふんわり厚切りロール」が一つ1.9ドル(日本円で約152円)、みたらし団子2.1ドル(日本円で約168円)や各種クリーム大福1.9ドル(日本円で約152円)など、さらにお手頃価格で購入できる菓子がそろう。この価格は、ローカル経営の洋菓子店と同じか、むしろそれよりも安い設定だといえる。そのせいか、シャトレーゼの店舗に行くと思いのほかシンガポール人の客でにぎわっている。週末にはレジに行列ができ「親戚一同で集まる場へのお土産に」と大量買いしていく地元民が後を絶たない。日本のようにリーズナブルでおいしいコンビニスイーツが存在しないシンガポールでは破格の日本スイーツ。シンガポール人の心をぐっとつかみ、一気に人気となったと考えられる。

写真はイメージです。

参照URL:国土交通省資料
https://www.singstat.gov.sg/docs/default-source/default-document-library/publications/publications_and_papers/household_income_and_expenditure/pp-s23.pdf
※2017年7月現在のシンガポールドルレート:約80円

 

なぜ、シンガポールでも支持されているのか?

シャトレーゼが2015年4月に初出店したのは、シンガポール西部にあるジュロンイーストという街だ。中心部であるオーチャードからMRT(地下鉄)で30分程度、タクシーでも15分程度はかかり、中心部と比較するとローカル感がただよう街並みである。在住日本人も多いエリアだが、シンガポール人からの支持獲得が成功に不可欠なエリアであるといえる。
その後、2015年11月に中心地であるオーチャードエリアに2号店、2016年6月に北部からのアクセスがよいノベナに3号店、2016年7月に中華系シンガポール人が集うチャイナタウンに4号店オープンと、続々と出店した。2015年4月の初出店から約1年半で4店舗をオープンするという流れは、日本から進出した飲食系企業の中でも成功しているケースだ。テナントや人件費などでコストがかさむシンガポールでは、早々と見切りをつけて撤退していく日本企業も多いのが現状である。シャトレーゼの出店エリアを考察すると、「どの店舗も日々の買い物や仕事帰りに立ち寄りやすい立地である」という特徴が見えてくる。
2号店があるオーチャードは、高級コンドミニアムや高級ブランドショップが立ち並ぶシンガポール最大の繁華街で、週末はシンガポール全土から買い物客が集まってくる。オフィスビルも多いエリアなので、会社帰りに立ち寄りやすい。
3号店があるノベナは在住日本人が多く住むエリアであり、HDB(団地)が立ち並ぶトアパヨやアンモキオなどからアクセスしやすい。
4号店のチャイナタウンは、HDB(団地)や市場・中国雑貨の店が並び、中華系シンガポール人の憩いの場となっているエリアである。
他の日系菓子店が中心部や繁華街に近いエリアのみに出店していることと比較すると、シャトレーゼはその手ごろな値段設定に合わせて、“普段使いしやすいエリア”を意識した戦略ではないかと考えられる。

参照URL:
シャトレーゼシンガポールFacebookページ
https://www.facebook.com/chateraise.singapore/
シンガポール経済新聞より
https://singapore.keizai.biz/headline/5882/

さまざまな視点から鑑みるに、成功のカギは地元民+在住日本人の支持を獲得したことにあるのではないか。もちろん、3万人以上いる在住日本人もシャトレーゼのシンガポール進出を大歓迎なのは言うまでもない。特に現地在住の日本人ママたちの間では「ちょっとした集まりや友人宅へのお呼ばれに持参するお土産の選択肢が広がった」と好評を博している。気軽に買える値段設定日常の中で寄りやすい出店エリア「非日常ではなく、普段気軽に寄れる菓子店」を当地でも意識したことが、わずか1年半の期間中に4店舗オープンという、成功につながった。シンガポールの隣国マレーシアや、中国・台湾にも続々と出店を進めているシャトレーゼ。アジア市場への展開を狙うこの日系菓子店がどうなっていくか、今後も注目したい。

 

「シャトレーゼ」にみるシンガポール進出の成功のポイントとは?

1.ローカルも普段使いできるお手頃価格

2.Made in Japanの品質とブランド力

3.日常生活の導線上にあり、立ち寄りやすいエリアへの出店

 

日本でも手軽な価格で買える「シャトレーゼ」ですが、損得勘定にシビアなシンガーポリアンの心理をぐっと捉えているようです。2017年7月現在、シンガポール内で16店舗にまで店舗数を拡大し、タイやマレーシアにも展開を広げているシャトレーゼ。今後のシャトレーゼの海外進出から目が離せません。

 

グローバルママ研究所
世界33か国在住の170名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2017年4月時点)。企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。
http://gm-ri.com/