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サンフランシスコ出張・現地リポート!『Uber』×トランプ騒動にみるミレニアル世代の消費感覚

こんにちは。世界のママを研究しつくす!「グローバルママ研究所」のNanaです。
皆さんは『Uber(ウーバー)』をご存じですか?私は恥ずかしながら、最近知ったばかりです。日本にいるとあまりなじみがないですよね…。
Uber』は、アメリカ発の自動車配車アプリサービス。東京でも一部利用ができるとか。ただ、日本では規制の問題があってあまり広まっていません。
今回は、グローバルママ研究所所長によるサンフランシスコへ弾丸出張レポート!『Uber』をめぐるある騒動から、全米で徐々に影響力を増しつつある、ミレニアル世代の生活者像を紐解きます。


「1分以内で向かいます」

スマートフォンのアプリで通知された画面を見つめていると、3分もたたずにあっという間に車が目の前にやってくる。
そんな夢のようなサービスを実現した『Uber(ウーバー)』。カリフォルニア発のこのサービスは、2009年に立ち上がり、あっという間に全世界で支持されるサービスとなった。今や世界で555もの都市で利用できるという(同社HPより)。昨今注目されているシェアリングエコノミーの最たる例とも言われているのはご存知の通りだ。

一方、需要があるサービスは類似サービスが瞬く間に立ち上がるのも宿命の一つ。『Uber』の競合サービスとして『Lyft(リフト)』のほか、『Grab(グラブ・シンガポール)』など、各国においてローカライズされたサービスが追随しているという図式が見られる。

本レポートでは、出張で見聞きした意外な北米における事象から今後、シェアリングエコノミーに関するビジネス、類似ビジネスを展開する際の留意点を浮き彫りにしていく。

参照URL:
Uber』公式サイトhttps://www.uber.com/
Lyft』公式サイトhttps://www.lyft.com/

 

『Uber』危うし?全米で巻き起こった論争

『Uber』はもう使いたくない。
『Uber』のアプリ、削除しようか?

 米国では、ある事象をきっかけに『Uber』離れが進んでいるという。まだ記憶に新しいトランプ政権による移民問題。ここで『Uber』のTravis Kalanick CEO(トランプ政権経済顧問)がトランプ派ともとられる発言をしたことがきっかけとなった。その企業姿勢に共感できないミレニアル世代(1980年以降生まれの世代)などから端を発し、急速にいわゆる「乗り換え」が始まっている。その内容はこちらの記事で詳しく紹介されているが、「#DeleteUber」というハッシュタグで急速に拡散されていった。

「So how many customers actually deleted their Uber accounts?」(2017年2月2日)
http://mashable.com/2017/02/02/real-effect-of-delete-uber/#liNLr2HrbmqP

Uber』のビジネスモデルはインターネットを介した消費者間の取引である
「C to C」がベースとなっている。この結果、エンドユーザーのみならず、供給側であるドライバー離れにもつながってしまっているという。

New York Timesによると、ユーザー側の離脱数はあっという間に200,000人以上にとなったという。もちろん、2016年10月時点で月間アクティブユーザーが4,000万人もいるサービスでもあるため、全体からみると微々たるものではあったが…。

しかし、供給が減れば利益減につながるほか、今回のようなネガティブキャンペーンにより企業イメージは低下、じわじわと利益を圧迫する。『Uber』にとって何らかの痛手となったことは容易に推察される。実際、筆者が複数回サンフランシスコで乗車した『Uber』最大のライバルである『Lyft』のドライバーたちに聞いてみると、

「そうだね、そういう事象が起こっているよ」
「自分は『Uber』のドライバーになりたいとは思わない」
といった声が聞かれた。

実際、グラフにするとそのインパクトがよくわかる。『Sensor Tower』社による分析では、1月28日を境にApp Storeでの一日のダウンロード数で、『Lyft』が『Uber』を見事に上回っているのがわかる。

画像出典:『Sensor Tower』

一方、一日単位のカテゴリーランキングでは、数日で『Uber』が盛り返しており、あくまでも一時的な事象であったとも解説されている。

参照URL:
「So how many customers actually deleted their Uber accounts?」(2017年2月2日)

http://mashable.com/2017/02/02/real-effect-of-delete-uber/#liNLr2HrbmqP

「Uber C.E.O. to Leave Trump Advisory Council After Criticism」(2017年2月2日)
https://www.nytimes.com/2017/02/02/technology/uber-ceo-travis-kalanick-trump-advisory-council.html?_r=0

 

論争の背景とは?

背景となったのは、トランプ政権による前代未聞の大統領令による移民排斥問題。
そもそも、『Uber』のTravis Kalanick CEO(トランプ政権経済顧問)がトランプ派ともとられる発言をしたことが始まりだった。
これに激怒した人々によって、「#DeleteUber」という反『Uber』のネガティブキャンペーンが突如として勃発した。
予期せぬところで発生したソーシャルメディアキャンペーンの結果として、対抗馬となるサービス(今回の場合は『Lyft』)が人気ランキングで急上昇するというある意味で
興味深い事象であると、ネットメディア『The Verge』では報じている。
一方、これに対抗するかのように「#DeleteLyft」キャンペーンがトランプ支持者から立ち上がったものの、そこまでのソーシャルインパクトはもたらしていないという。

この事象は何を物語るのか?

Uber』だけではなく旅行革命を巻き起こした『Airbnb』やフリマアプリ『メルカリ』など、シェアリングエコノミー(共有型経済)の進展を背景に、「C to C」をベースとした新規ビジネスは、当面増え続けることが予測される。一方、「C to C」だからこそ、そこにはリスクも潜んでいる。需要側と供給側、ともにC(消費者である個人)であるからこそ、一歩間違えると今回のトランプ騒動における『Uber』のようになりかねない。特に今回は怒りの矛先が向かったのが『Uber』のような、自動車数の減少や混雑緩和、公害削減などへと向かうミレニアル世代の熱烈な支持をうけるような世界観を持った企業であったことも興味深い。ミレニアル世代がユーザーやドライバーに占める比率が高いからこそ、より一層、ソーシャルメディア上で炎上・批判の対象となりやすいのだ。

2014年に発行された PwCによる「シェアリング エコノミー」レポートによると、シェアリングエコノミーの企業については、信頼している人の推薦がないと信用できないと回答した人が69%にも上っていた。また、シェアリングエコノミーで得られる体験に一貫性がないと感じると回答は72%を占めていた。つまり、ユーザーは何らかの不信感や不満を抱えながらも、シェアリング エコノミー企業のサービスを利用していることになる。ある意味脆弱な信用基盤のもとに成り立っているのがこのような企業のリアルでもある。だからこそ、ちょっとしたほころびがソーシャルメディアなどを通じてあっという間に拡散し、一気に今回のようなネガティブキャンペーンにつながりやすい、ということも理解しておく必要がある。

全米で今や人口の約1/3を占めるミレニアル世代。この世代の消費行動や価値観、動向は今後も目を離せない、そんなことを元企業広報として思ったサンフランシスコ出張であった。

参照URL:
「Lyft surpasses Uber in app downloads for the first time ever」(2017年1月30日)
http://www.theverge.com/2017/1/30/14443560/lyft-surpass-uber-app-downloads-deleteuber

「シェアリング エコノミー」(PwC・2014年)
https://www.pwc.com/sg/en/publications/assets/the-sharing-economy-jp.pdf

 

着目したい点

1.「C to C」がベースとなるシェアリング市場では、企業姿勢が明日の収益に直結!

スマートフォンの普及や技術の進展により、「C to C」をベースとした
シェアリングビジネスは展開しやすくなった。一方、そこに潜む企業リスクも忘れてはならない。
既存ビジネスでは見過ごされてきた小さなエラーも、ネットビジネスの世界では企業の命運を左右する事象につながりかねない。

2.ミレニアルの台頭で大きく変わった商品・サービス選びの基準

今回の騒動の影響においてミレニアル世代の行動を無視することはできない。キーワードは「情報開示」「透明性」である。当たり前のようにインターネット
がある環境のなかで育ち、複数のメディアを自在に操る世代と接する際に重要なのは真摯に向き合い続ける姿勢である。
そのような企業姿勢が共感を呼び、商品やサービスの購買につながることを今回の事象ははっきりと示している。

3.スピード、スピード、スピード!

瞬時に拡散されるソーシャルメディアの世界にあって大切なのはスピード感を持って対応できること
今回、対抗馬である『Lyft』はすかさず「#DeleteUber」キャンペーンを支持する
米国自由人権協会(ACLU)に100万ドル寄付することを発表した。
結果、『Lyft』のダウンロード数は、通常の2倍近くまで上がったという。
この対応に関しては批判もあるが、スピード感を持った動きがますます重要になりつつあることは明らかである。


サンフランシスコ弾丸出張レポートいかがでしたか?
SNSが世界的に劇的なスピードで普及しつつある今、良い情報も悪い情報も、あっという間に拡散してしまうことを事例であらためて実感しますね。
だからこそ、企業はどう備えるべきなのか。考えるひとつの材料としてぜひご活用ください。

 

 グローバルママ研究所
世界33か国在住の170名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2017年4月時点)。企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。
http://gm-ri.com/